大地の芸術祭2018に行ってきた。前編
新潟県では3年に1度、まち全体を使った、ちょう広大な芸術祭が行われる。それを知ったのはいつのことだったか。なんとなく、「おもしろそうだなー」とおもっていた。芸術のことなんかぜんぜん知らないくせに。
ただ、積極的に関心があったわけではない。なにかの折に思い出しては、ああ、そういえばそんなのがあるって言ってたな、おもしろそうだよな、とおもっていただけだ。ずっとそんな距離感でいるのだろうとおもっていた。
だが、今年仲良くなった友達のみきぽさんが、同行者を募集していた。なんでも、学生時代にこのイベントでボランティアをしていたことがあるという。一緒に行けば案内をしてもらえるということになり、気がつけばとんとん拍子に話が進んでいた。あのイベントに、ついに行く日が来てしまったのである。
「大地の芸術祭」に。
8時に待ち合わせるはずが、お互い起きれなかったり、旅行の用意を当日していたりして10時集合になった、という些細なトラブルもあったが、無事に新潟に着いた。片道3時間半程度のドライブである。
芸術について語れるほどの知識も理解も持ち合わせていないので、写真と感想を中心にただ書き殴らせていただくことにしよう。
作品の前についているアルファベット+3ケタの数字は作品No.である。今後参加されるときの参考までにどうぞ。
十日町エリア
とりあえず、まずは十日町市の拠点施設であるT025「越後妻有里山現代美術館[キナーレ]」に向かうことにした。
キナーレ
最初に見たT373「みずたどり」という作品。
T375「方丈記「試機」」。
T365「Space-time Cave(時空の穴)」という作品はかき氷屋になっていた。
T360「スタンディング酒BAR 酔独楽・よいごま」という作品は
アートを売っていた。アートを売るアート。なんだその概念は。
T379「越後妻有 コラボ甘味屋台」。これも作品のひとつ。スイーツを売っている。
スナックもあった。
これも作品のひとつ。T362「Karaoke & Humankind」。
T378「Publish-Fabric ~地球に編まれる立体 MAGAZINE~」。
この作品は、立体としての読み物であり、日々新たな写真や情報を得て編集されていく、というもので、とてもよかった。ライブカメラも組み込まれていた。
まったくもってアートに造形が深くないので、作品を店にしているのか、店であることを前提にした作品なのかもわからなかったが、店舗の作品というものがとにかく斬新で衝撃を受けた。アートってこういうことをやっていいものだったのか。すげぇや。
段ボールでできたT369「A SHELTER OF THE DIGITAL」。
こちらは土嚢のT361「つくも神の家」。
こちらのこの絵は……
特定の位置から見ると、水面に映ったようになる。T352「Palimpsest: 空の池」。
こちらは食べるアート。
室内にも常設の展示がある。T229「Rolling Cylinder, 2012」。
T224「トンネル」見知ったもののサイズ感がちがうというたのしい作品。
紹介したいものはまだまだたくさんあるけど、これぐらいにして次へ。
鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館
廃校を利用した建物。この後、山ほど見ることになる。
新作の展示T397「カラダのなか、キモチのおく。」。マムシのなかに飲み込まれて進んでいく。
いろいろなものが吊るしてあってたのしい。
抜けると屋内へ。校舎全体がT173「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」というひとつの作品だそう。
アートがなくともアートっぽいのが廃校という場所。
おばけがいた。女子更衣室に出るとはうらやまし……じゃなかった、けしからんおばけだな。
廃校になる直前の、最後に残った3人の生徒をモチーフにしているそう。
どこまで作品なのか、それが問題だ。
基本的にはいろいろ浮いてる。
浮遊感のある展示や、廃校になる前の最後の3人の生徒たちにスポットを当てた作品がおおかった。
1日目の夜
初日は移動で時間を使ってしまったので、大きめの施設を中心に巡った。翌日は朝から日帰りで友人のFogさんがいらっしゃるとのことで、越後湯沢に宿を取った。
森瀧のうどんすきを食べた。豪勢に牛すき(一人前1200円)にしてやった。
越後湯沢で泊まるならば外せないお店が森瀧。越後湯沢にはスキーで以前何度か訪れているが、ここのうどんすきはほんとうにうまい。関西風の薄味のだしがたまらない。肉のない通常のうどんすきは840円というすばらしいお店なので、貧乏旅行にも最適です。おすすめ。
越後湯沢は外湯がいくつかありますが、かけ流しの「山の湯」がおすすめです。
泊まったホテルの名前がラブホっぽくておもしろかった(いいお宿でした)
宿で作戦会議。行きたいところに印をつけたのですが、どうかんがえてもおおすぎる。
作戦会議をしたり、過去の黒歴史日記を見せ合ったりして夜は更けていった。
テンションで黒歴史を晒すと、翌日本気で恥ずかしくなるのでおすすめできません。
枯木又プロジェクト
T268「枯木又プロジェクト」。廃校を利用したアートは2つめ。
2日目は、「枯木又プロジェクト」から見学開始。
土器に、草が入っている作品が展示してありました。生命力をあらわしているのかしら。
廃校というだけでエモさが2ランクぐらい上がるのでずるいとおもった。
道中に見つけたもの
次の目的地へ向かう途中、目を引くものがあった。
なぜか「スパイラル~推理の絆~」のキャラクターが描かれた家があった。しかも2軒。
わたしが高校生だった十数年前にはやったマンガですよ、なんでや。しかも上手い。
テンションが上がって写真を撮りまくっていたら、家からおじいちゃんが出てきたので「いやこれ上手いっすねー!どなたが描いたんですか!?」って軽く聞いてみたら「わたしです」だって。ほんとに!?
なんでも「かわいい絵が描きたくてですね……BOOKOFFって知ってますか?そこで買ったんです。」とのこと。スパイラルの大ファンというわけではなかった。
妻有田中文男文庫
公民館を改修して作られたT201「妻有田中文男文庫」。
T200「天の光、知の光―Ⅱ」という作品。本が7色に光る!サイバーパンクな世界観!!
おなじ建物の2階に飾られていたのはT344「裏側の物語」という作品。なんのことない絵のようだが……
じつはこれ、影絵なのだ。陰影も。ぜんぶ。すげぇぇぇぇー!!!
川西エリア
ナカゴグリーンパークにはたくさんの作品が展示してあるということで、出掛けてみた。この地に展示してあるアートはK094「里山アートどうぶつ園」という名前でまとめてあるそうだ。
里山アートどうぶつ園
府中にある、東京競馬場で見たものとおなじような作品があった。おなじ作者なのかな。
もっとも感銘を受けた作品。「かんがえない」という題がついていた。わたしもかくありたい。
作品ではないが、車のロゴがあまりにもシンプルで衝撃を受けた。
屋内には以前五美大展で話題になっていた「大猫行列」があった。
以前の五美大展ではまっすぐに歩いていた猫たちだが、ここではスペースの都合か、弧を描くようにして行列していた。
配置や並びかたががちがうとなると、おなじ作品でもちがって見えるわけで、以前の大猫行列とこれは、おなじ作品と言っていいのだろうか?たとえば、絵であれば額の内側だけで完結しているわけで、どこに持っていってもおなじだろうけども。こういう作品は「どこまでが作品なのか」という作品の境界線がきわめてあいまいで、どうやって見ていいのかわからないところがある。ふしぎである。芸術は奥がふかい。
なお、案内文が「中に猫がいます」ではさすがにまずかったのか、張り紙で訂正されていた。
このあと、有名な「光の館」にも足を延ばしたが、雨のため、屋根が閉まっていた。ざんねん。晴れているときにまた再訪したい。
松代エリア
へぎそば
新潟の魚沼地方には「へぎそば」とよばれる郷土料理がある。
つなぎに「ふのり」と呼ばれる海藻を使ったそばで、へぎという木の器に盛られて提供されるものだ。
割烹そば処 松苧(まつお)に立ち寄った。
天へぎ(1400円)の大盛(+200円)。ボリュームもじゅうぶん。
地元で採れた山菜を天ぷらにしていて、一品ずつ説明をしてくれる。カラッと揚がっていておいしかったなぁ。ふつうのそばよりもちょっと緑がかっていて、コシがつよめのおそばもさいこうでした。また食べに行きたいな。遠いけど……
店の外にはこれもアート。D129「イナゴハビタンボ」はイナゴ型の滑り台。子どもが何度もすべってた。
SF (Summer Fiction)
松代支所にも作品があるそうなので見に行った。ずいぶんとお役所も理解があるもんだなぁ。D356「SF (Summer Fiction)」。
あきらかにあやしい倉庫。
なにかがちがうインスタ映えがそこにあった。サイバーパンクな重機たち。
踊るダンスフロア。まちがったインスタ映え。なのに、かっこいい。いままでわれわれはこんな重機の一面を知っていただろうか。たとえるなら、メガネを外して髪をほどいた、クラスの地味なあの娘とぐうぜんバッタリ会ってしまったかのような、新たな一面。いや、あの娘はこんなにごつくないな。
ドクターズ・ハウス
「医者の家?」どうも興味をそそられない名前だなぁ、とおもっていたのだが、みきぽさんの勧めにより見学することにした作品。だが、結果から言うとこれがめちゃめちゃかっこよかったのです。D330「ドクターズ・ハウス」。
レトロな佇まいに惚れる。どれどれ。中はどんなかんじなのかな。
うおお!銀世界!!一面銀世界だ!!雪が積もってるわけじゃなくて、ほんとうの意味での銀世界だ!!
外観と内観のミスマッチさと、それからこの異次元に迷い込んだようなふしぎな高揚感。めちゃめちゃテンションが上がりました。ただ、女性のかたのスカートはおすすめしないかも。
この後、影向の家(ようごうのいえ)にも行ったのですが、ここはとても写真では語れないような作品だったので、こちらはまた3年後、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2021」でぜひご覧いただけたらとおもいます。おすすめでした。
さて、あまりにも長くなりそうなので、後編に続きます。もしよかったら見てね。