鶴見線ツアーへようこそ。
鶴見線という路線がある。
JR東日本の電車に乗って、ドア上の路線図を見ると、下のほうに描いてある
アルファベットの「m」にも似た、へんな形の路線だ。
※JR東日本公式サイトより引用
鶴見、海芝浦、大川、扇町と、行き止まりが4つもある。
駅の名前も国道や安善、昭和となんだかちょっと投げやりなかんじがしないか。
昔から、ここが気になっていて仕方がなかった。
社会人になり、バイクを買った。
まずこの辺りをひとりツーリングした。京浜工業地帯のどまんなかを走る路線。
周りを見渡せば、海と工場と貨物線。
工場や廃墟、廃線といった人工物がすきな自分には、とても心地の良い空間だった。
はじめてこのあたりを走った時のあの気持ちは、いまでも覚えている。
その後も何度か足を運び、そのたびにいいなぁと、ひとり満足に浸っていた。
しかし、数度に渡る転職・引っ越し、環境は激変した。
いつのまにか、このあたりに来ることもなくなっていた。
なんせ、片道1時間半はかかるのだ。20分やそこらで来れていた、あの頃とはちがう。
職場の環境も、生活のスタイルも、なにもかもが変わったのだ。
もう、あそこに行くこともないだろうと、そうおもっていた。
だが、2018年。久々におれはこの地に訪れることになった。
鶴見線周辺を見渡して、うっとりするだけの企画、「鶴見線ツアー」の主催者として。
そもそものきっかけは2016年末、Twitterの相互さんからの連絡であった。
共通の音楽がすきで出会った、北海道に住む彼は、不思議と他の趣味も合ったのだ。
その彼が年末関東に遊びにくるという。
その日が初対面にもかかわらず、車ですきな音楽を流しながら
ラーメンと団地と工場をめぐるという、1日がかりの(仮称)鶴見線ツアーを行った。
テンションが上がりまくって、他のフォロワーさんに「なにいってんだこいつ」とおもわれるだろうなー、とおもいつつも写真をめっちゃTwitterにアップした。
団地、駅、工場と京浜工業地帯最高のルートを巡ってますね。寒いですが天気良くて空気も澄んでいるので今日は当り日だと思いますよ。Bさんツアーいつか参加したいです。TWEEDEESの旗を目印に!
— Fog_T.E.N.T (@fogtent1026) 2016年12月30日
意外なことに反応があったのだ。まじかよ。なんとありがたい。
ちなみに、TWEEDEESというのは以前ブログに書いた沖井さんのバンドである。
ライブグッズに旗がある、という謎のバンドだ。
仕事の都合で、なかなかライブに行くことができず、
おれの旗は現状待ち合わせの目印としての役割の方がつよい。
待ち合わせの目印にも最適。 pic.twitter.com/SzxrEOrKIm
— 少年B@じこは (@raira21) 2017年8月14日
その後、2017年の地味ハロウィンで出会った、たなむらさんというかたが
浜川崎駅のツイートをしていたことがきっかけで、
鶴見線に行きたい!というかたが意外といる、ということに気付いたのだ。
また鶴見線ツアー企画しようかとおもうんだけど、工場とか廃線とか気になるぜ!ってかたいらっしゃる……?
— 少年B@じこは (@raira21) 2017年11月3日
ちなみにFogさんとたなむらさんはすでに勝手にメンバー入りさせていただいてる。
このツイートに、声を上げてくださったかたがけっこういたのだ。うそやろ。
かくて、「鶴見線ツアー」が決行されることとなった。
Fogさんとたなむらさん、ほうどうさんにおれ。
偶然にも地味ハロウィンで出会った4人で、さぁ、鶴見線ツアーのはじまりだ!
この至近距離に踏切がふたつ、というありえない光景にテンションが上がる一行。
鶴見線ツアー、という名前にもかかわらず、今回は車での旅となった。
途中、浅野駅から分岐する海芝浦支線、安善駅から別れる大川支線がある。
休日ダイヤだと、海芝浦支線は1~2時間に1本、大川支線に至っては1日3本である。
本線も列車本数はいちばん多いものの、途中の浜川崎駅を越えると
昼間は2時間に1本という時間帯がある。
おおよそ神奈川県とはおもえない本数の少なさだ。
ここは京浜工業地帯のどまんなか。
近郊の工場に通う方々向けの路線ゆえ、休日は極端に本数が少ないのである。
本音を言えば、鶴見線の電車に乗ってこそ、という気持ちもあるが、
ここは現実的な選択をさせてもらうことにした。
この物々しいかんじがたまらない。
この貨物線の行先は米軍の貯油施設であり、厳重に警戒されているのだ。
貯油施設でも「タンク車だー!」「すっごーい!!」と叫んではしゃいでいたところ、
近隣の工場のかたから「さわいでいて逮捕されたひともいるから、気をつけな」と
声をかけられ、われわれは無言で車に戻ることとなった。
この付近にはむかし、浜安善駅という廃貨物駅があって、
駅舎もしっかり残っていたのだが、すでに取り壊されてしまったようだ。ざんねん。
安善駅付近の安善湯。
デイリーポータルZの記事にもなっていた。
参加者のなかにデイリー愛読者が多かったこともあり、
なんかまるで、ちょっとした聖地巡礼のようだった。
次に向かったのは大川駅。
土日祝日は1日3本の電車しか来ない、大川支線の終着駅だ。
すごくないですか。廃駅じゃないんだよ。現役の駅舎。神奈川県の。
さっそくテンションの上がるわれわれ。
ここからは写真をまとめてご覧いただこう。
むかしはこのあたりの会社に貨物列車で輸送することがあったのだ。
しかし、それも廃止になり、この広大な構内だけが残った。
貨物専用線も埋められ、いまは列車も通ることはなく、
踏切の遮断機も二度と降りることはないのだろう。
今となっては電車よりも、バスの方が本数も多く、便利であるとも聞く。
まさに、兵どもが夢のあと、というようなかんじではないか。
さぁ、こうしてはいられない。次はいよいよ電車に乗るのだ。
浅野駅。近くの公園に有料駐車場があるのでべんり。
お昼時の海芝浦支線は2時間に1本。これを逃すわけにはいかない。
構内踏切。線路の上を歩かないと隣のホームに行けないのだ。テンションが上がる。
伝説の武具を4つ揃えると封印が解けて、押せるようになるスイッチ。
ものすごいカーブ。こちらは海芝浦支線専用ホーム。
電車がきた。
ホームと電車の隙間の幅がやばい。
降りるときは気をつけないと危険だ。スマホ歩き ダメ、ぜったい。
さて、電車に乗って出かけよう。
ふたつめの終点、海芝浦駅へ。
やばくないですか、これ。駅から見える風景とはおもえない。
なお、この海芝浦駅には「海芝公園」という公園が併設されている。
工場は白い煙を吐き、海は油膜がかがやいている。
海を汚し、空を穢し、それでも我々の生活を支えようと、いっしょうけんめいに働き、
しかしそれゆえにひとにきらわれた、工場たちのリアル。
ここには、それがある。生活が便利になった代償のすがたもまた、ここにある。
そんなことをつい、おもってしまった。
じつはこの駅は東芝の敷地内にある。
電車で行けるが、降りられない。そう、電車でしか行けない駅なのだ。
なお、工場側の撮影は禁止されている。
こちらの姿はぜひ、その目で確かめていただきたい。
夕暮れの海芝浦もきれい。(写真は2016年末撮影)
あと、おもわずツッコミを入れてしまったのがこれ。
電車でしか行けない駅で、これどう逃げろというのだ。
さて、そろそろ電車が出る時間。浅野駅に戻りましょうかね。
鶴見線専用路線図。
浅野駅ちかくにあった建物。かっこいい。
「なにこれ?」「カフェ!?」「サードウェーブ!?」「……浅野で!?」
なんて会話をしてたんだけど、どうやら貸しスタジオみたい。
中もなかなかかっこいいぞ。いつか覗いてみたい。
パイロッツ スタジオ 【 ZONE ID 】 ゾーン・アイディ
さて、車に戻って、次の駅に行きましょうか。
と、言っておいて、おもわず途中で車を止めてしまった。
この橋とプレハブ、めっちゃよくないですか。
さて、着いたのは浜川崎駅。
おなじJRの南武線(浜川崎支線)との乗換駅なのだが、
元々別の鉄道だった成り立ちもあり、道路を挟んで別の駅舎になっている。
その先は大きな貨物駅となっている。
そして鶴見線の旅客線はその脇を抜け、扇町駅方面に向けて進んでいく。
ここでは貨物線のほうが優先されるのだ。
ここまで見てきたなかで、唯一リニューアル済みの昭和駅。
気になる駅名だが、隣にある昭和電工(の前身の昭和肥料)の最寄り駅、ということで
この名前がついたらしい。
ちなみに、熊本に平成駅、大阪と長崎に大正駅があるらしい、行ってみたい。
この駅前でベストショットが撮れた。
貨物列車と鉄塔、交差する電線。どうです、めっちゃかっこよくないですか。
そして、終点の扇町駅。
ちょっと物悲しいアーチが特徴的だ。
正月早々物好きなやつが来たニャ
おめーらなに見てるニャ 見せ物じゃないニャ
扇町駅は猫のオアシスだ。写真に撮った以外にも2匹ほどいた。
彼らに会いたくなったら、また来よう。
この券を持って鶴見駅で精算するようだ。
これで大川、海芝浦、扇町。m字型の鶴見線の3つの終点をすべて回った。
だが、鶴見線の魅力はこれだけじゃないのだ。
最後に、鶴見の隣駅、国道駅の姿をご覧いただこう。
この写真で、少しでもよさが伝われば幸いである。
ありがたいことに、興味を持ってくださる方が多数いらっしゃるようなので、
今後もこの鶴見線ツアーは不定期(日・祝)に開催していく予定です。
もしも「興味あるよー!」というかたは
TwitterのリプライなりDMなりでぜひお気軽にお声かけください。
一緒に「すげー!!かっけー!!」って叫ぼうぜ!
鶴見線のあとも、色々工場や貨物線を見て回った。闇を裂き走る機関車も、これまたよくないですか。
※一部、ほうどうさんの写真を使わせて頂きました。ありがとうございます!